どうでもよくないおはなし・5
自分は何者なのか?と自らに問うことが軽視されているように思う。
皆、毎日忙しく働き、日々の業務の中に自分自身を埋没させている。
自分という存在を、自分自身の掌(たなごころ)でもてあそんでみるがよい。
人間は弱く、ずるい。ウソつきで、気まぐれな存在だ。
だからこそ、少しでもまともな人間になろうと努力する。
強くなろうとする。正直になろうとする。継続しようとする。
しかしどれも、本当の意味で自分のためにならぬ営みばかりだ。
世俗的な意味での成功を求めるなら、いくらでもあがくのがいい。
しかし、人間の真実の姿は、もっともっと愚かで、卑劣なものなのだ。
その真実から目をそむけて、強く、正直で、首尾一貫し、人から慕われる
理想の自分像を求め続けているのが現代の人の姿だ。
わたしはそのような営みを否定はしない。
ただ、鼻でせせら笑っているだけだ。
わたしは努力する人間を軽蔑はしない。
ただ、たまには少し歩みをとめてほしいだけだ。
答えは自分自身の中にしかない。
世界の隅々まで見て歩き、あらゆる頂を極め、艱難辛苦のすべてを味わいつくして至った場所に、何があるというのだろうか。
そこには何もない。ボロボロになって疲れ果てた肉体と、あなたの魂があるだけだ。
あなたは何を得ただろうか。疲れた肉体と、消耗しきった魂があるだけだ。
あなたの本質は、何も変わってなどいない。
あなたの本質は、どこにいても、何をしていても、あなたを追いかけてくる。
どこでもいい、ただ一度だけ振り返ればよかったのだ。
あなたはいつもあなたの後ろにいる。